加齢黄斑変性とは

黄斑とは、網膜の中心部分である直径1.5mmほどの範囲です。これが主に加齢による変性によって、様々な症状が起きている――。この状態が加齢黄斑変性です。高齢者の失明原因の一つとされていますが、喫煙、紫外線による酸化ストレス、偏食なども、この疾患のリスク因子です。
人間は年を経るごとに黄斑の細胞の働きが悪くなっていき、やがて酸素や栄養分の供給も低下するようになります。そして老廃物は蓄積されていきます。これがさらに進行していくと、新生血管が黄斑に発生するようになって出血がみられるようになるのです。
そのことによって、視力低下、物が歪んで見える、見たい所(中心部)が見えないといった症状がみられるようになります。また出血や血液の染み出しの量が増えると、視力の低下が著しくなって、色の識別も困難になります。なお加齢黄斑変性は、変性のタイプによって滲出型と萎縮型に分類されます。
「滲出型」と「萎縮型」
加齢黄斑変性には、「滲出型」と「萎縮型」の2つのタイプがあります。
滲出型は、黄斑の脈絡膜(網膜より外側にある、血管が豊富な膜)から網膜に向かって、新生血管が伸びていくタイプです。新生血管はもろくて弱い性質なので、出血しやすく、血液中の水分が染み出ていきます。これによって黄斑の視細胞は急速にダメージを受け、その機能は急激に低下していくのです。
一方の萎縮型は、すでに病変により網膜脈絡膜に不可逆な変性が生じているタイプのものです。
なお萎縮型の治療法については、現時点で有効な方法は確立されていませんが、定期的に眼科で検査を受けるようにしてください。なお滲出型から萎縮型のような状態になるには10~20年ほどかかると言われています。
検査について
加齢黄斑変性が疑われる場合、以下の検査を行います。
- アムスラー検査
- 格子のゆがみ具合を調べる検査になります。碁盤の目(方眼紙)のような図を見て、物が歪んで見えるか否かを確認します。
- 眼底検査
- 眼球の奥に光を当てることで、網膜の状態や血管を調べる検査ですが、加齢黄斑変性(滲出型)では、出血や網膜のむくみなどを確認します。
- 蛍光眼底造影
- 蛍光を発する性質のある造影剤を腕の静脈から注入します。その後特殊な光を当てることで、新生血管などの状態を詳細に確認する検査です。
- 光干渉断層計(OCT)検査
- 近赤外線を眼底に当てることで、その反射波を解析して、層構造をした網膜の断層像を描出し、網膜の状態を調べます。網膜やその下の新生血管などの状態を立体的に把握します。
治療について
検査の結果、滲出型の加齢黄斑変性であれば速やかに治療が行われます。治療法には、硝子体注射(抗VEGF療法)をはじめ、レーザー光凝固、光線力学的療法(PDT)などがありますが、新生血管の活動性、中心窩(黄斑の中心部分)との位置関係などによって異なります。
光線力学的療法(PDT)
新生血管が中心窩にある場合に行われるのが光線力学的療法(PDT)です。光感受性物質の薬剤を腕の血管から注射していき、これが新生血管に多量に入ったと同時にそこへ特殊なレーザー光線を照射して、新生血管を損傷させるという治療法になります。この治療法は熱がほとんどなく、視細胞を焼くということはありませんが、視力が低下する可能性があります。原則入院と特別なレーザーが必要なため、大学病院等へのご紹介となります。
抗VEGF療法
抗VEGF療法とは、「VEGF阻害薬」(抗VEGF薬)を眼球に注射(硝子体注射)する方法で、新生血管を縮小させる効果が期待できます。注射にかかる時間は数分程度ですが、一定の期間を開けて繰り返しを打つ必要があります。
レーザー光凝固
レーザー光凝固は、中心窩から離れた場所に活動性の高い新生血管がある場合に用います。新生血管をレーザー光線で焼き潰すことで出血や血液中の水分の漏れを解消していくわけですが、周囲の正常な組織も同時に焼き潰すので、レーザー光線を当てた部分に応じた見えない箇所が出てきます。この治療は、現時点での視力の維持を目的に行うものです。なお同療法では、術後1年間は新生血管が再発しやすく、再発した場所が再び中心窩外であれば、再びレーザー光線による治療を行います。